解説

近年、AIツールを業務に取り入れる際、特に信頼性が求められる財務分析の分野での利用が注目されています。Copilot in Excelは、その用途に特化した機能強化を行い、「答え」だけでなく「根拠」や「手順」まで追跡できる仕組みを取り入れました。これは、高度なデータ連携と自動化が進む中で、AIが出した結果に対する信頼性の確保(ガバナンス)が求められているからです。

ポイント

  • Copilot in Excelに財務部門向けの機能強化が施され、計算過程やデータ根拠の可視化が進んだ。
  • カスタムスキルライブラリや複数の金融データコネクター対応により、専門的な財務分析(M&A評価など)の実行精度と網羅性が向上した。
  • 変更履歴の追跡機能や「Plan with Copilot」による事前確認プロセスが導入され、AI利用における信頼性と監査可能性を大幅に高めた。

情シスへの影響

【Copilot in Excelの構成とデータ連携】

  • データ源の拡張: LSEG(London Stock Exchange Group)やMoody’sなど複数の外部金融データプロバイダーとのコネクタが追加され、Excelワークブックへの取り込みが可能になりました。これにより、既存の認証・アクセス管理ポリシーの見直しが必要となる可能性があります。

  • カスタムスキル/ワークフロー制御: 独自のプロセスを自動化する「カスタムスキル」の作成と利用が進むため、ユーザーによるファイル保存場所(OneDriveなど)やファイル構造(Markdownファイル等)に対する適切な権限設定、および機密情報漏洩防止のための監視体制構築が重要になります。

  • コンテキスト活用(Work IQ連携): 職務上の文脈(業務コンテキスト)を活用して高度なプロンプトを実行する機能が増えるため、どのデータや情報源をCopilotが参照しているかを明確に制御するためのガバナンスレイヤーの設計が必要となります。

【ユーザー利用とセキュリティ】

  • 監査可能性/追跡性: Copilotによるすべての編集(更新予定範囲、数式変更など)がリンクとともに追跡可能になる一方、この高度な追跡機能を利用する側のコンプライアンス教育やログ管理の仕組みを確立する必要があります。特定の業務プロセスにおける「AI生成データ」と「手動入力データ」の区別をユーザーに徹底させることが求められます。

影響範囲

Microsoft 365 Copilotが組み込まれたExcel for Web、Windows、macOS。

影響を受ける領域:財務分析、経理、税務など広範な業務プロセス。特に外部金融データ(LSEG, Moody’s等)とのコネクタ利用時、およびカスタムスキルをOneDriveに保存する際の設定。ユーザー: 財務部門などの高度なデータ処理を行う管理者層、実務担当者。

要確認:全ての新機能や接続先について、組織のガバナンスポリシー適用範囲と必要なアクセス権限。

重要度

★★★★★

対象者

  • M365管理者
  • Entra管理者
  • セキュリティ担当者
  • ネットワーク管理者
  • AD管理者

優先度

早めに対応

優先度の理由

本機能は「財務業務の信頼性」と「監査対応」を強化したものが中心であり、高度なデータ取り扱いを含むため、導入に際して情報セキュリティポリシーや利用ガイドラインの見直しが急務です。特に外部データコネクタの追加と、AIによる変更履歴追跡機能を活用する際のログ監視体制などについて、早期に調査・検証を行うべき段階だと考えられます。

確認手順

  • 管理者側でCopilot in Excelを利用するための必要なライセンス(Microsoft 365 Copilot)が適切なテナント単位で付与されているか確認する。
  • 外部金融データコネクタ(LSEG、Moody’sなど)の利用に必要なAPI認証情報やアクセス権限が正しく設定され、漏洩リスクがないか監査ログを確認する。
  • ユーザーが独自のカスタムスキル(Markdownファイル等)を作成・保存する際のOneDriveフォルダに対する権限設定とアクセス監視ポリシーを設定し直す。
  • Copilotによる変更履歴追跡機能の動作範囲と出力形式を検証し、ログやレポートとして利用可能な形で収集できるか確認を行う。

推奨対応

  • 導入初期段階でのパイロット運用(PoC)を推奨します。必ず少数のユーザーグループに限定して試験的に導入し、実際の業務プロセスで求められる信頼性、操作性の実証検証を行ってください。
  • データガバナンス部門と連携し、Copilotが参照するすべてのデータ源(ワークブック内のデータ、OneDrive上のスキルファイル、外部コネクタの市場データなど)について、機密分類とアクセス権限ルールを再定義してください。
  • ユーザー向けに「AI生成物の扱い方」に関する教育を実施し、Plan with Copilotによる事前確認や変更履歴の重要性を理解してもらうことが必須です。