解説

AIの急速な進化に伴い、ITシステム開発における従来の「垣根」が崩れつつあります。外資系ベンダーの日本市場参入などもあり、企業は単に特定のツールを導入するだけでは対応できなくなってきています。

このため、複数のAIモデルを連携させたり、データを安全に扱うための仕組み(ガバナンス)をシステムに組み込む「統合的な設計力」が非常に重要視されています。自社の基幹システムにおいて、単なる機能実装ではなく、どのAIモデルを使うか、どうデータフローを管理するかのアーキテクチャ設計が焦点となっています。

ポイント

  • 外資系ベンダーの参入とAI進化により、企業は単一のツール導入ではなく、複数のAIモデルの連携による統合的なソリューションを求めている。
  • 新生TISIは、自社の強みであるシステムインテグレーション力に「IntegriA」によるトータルなガバナンス・変革支援を加えることで差別化を図っている。
  • 今後は、AI単体の提供ではなく、企業の経営や業務プロセス全体を変革し、最適なモデル選択やリスク対応を包括的に実現する設計力が重要となる。

情シスへの影響

AI活用が前提となるシステム構成において、以下の点が考慮される必要があります。

  1. マルチLLM戦略の実装と連携: 複数の異なるAIモデル(オープンソース、商用クラウドAPIなど)を組み合わせて使用するアーキテクチャを設計し、それらのデータ入力、出力、結果の処理フローを一元管理する仕組みが必要です。単一ベンダーへの依存度を下げる工夫が求められます。

  2. ガバナンスレイヤーの強化: 外部AIサービスやデータを活用する際、データの流れ(ライフサイクル)、利用可否の制御、セキュリティポリシーの適用など、高度なデータガバナンス層をシステムに組み込む必要があります。特に機密性の高い業務データが取り扱われる場合、どこまでを自社内に保持し、どの部分を外部APIに渡すかの判断が必要です。

  3. アーキテクト的視点での設計: 単なる機能実装ではなく、「このユースケースにはAモデル(高性能だが高コスト)を使い、別のユースケースにはBモデル(安価で利用制限が緩い)を使う」といった、目的・コスト・リスクに応じたAIモデルの選定と切り替えに対応できる柔軟なシステム設計能力(AIアーキテクト的視点)が求められます。

影響範囲

クラウド/オンプレ/ハイブリッド環境上の基幹業務システム全般。特に、データ連携を行うワークフローエンジンや、外部APIを呼び出すマイクロサービス群に影響する可能性があります。対象範囲は「全てのAI活用を進める開発・運用プロジェクト」が想定されます。

重要度

★★★☆☆

対象者

  • M365管理者
  • Entra管理者
  • AD管理者
  • Windows管理者
  • Linux管理者
  • ネットワーク管理者
  • セキュリティ担当者

優先度

計画的に対応

優先度の理由

AIの利用が必須となる将来のシステム設計(次期開発案件)において、複数のモデルや外部サービスを安全に連携させるためのアーキテクチャ検討が必要な段階です。緊急の脆弱性対応ではありませんが、今後のシステムの企画・設計フェーズからガバナンスと柔軟性を考慮に入れる「計画」が必要です。

確認手順

  • 現在取り組んでいるプロジェクトにおいて、AI利用を前提としたデータフロー図(DFD)を作成し、入力/処理/出力の各段階で機密性の高い情報がどう扱われるかを確認する。
  • 複数の外部APIやLLMを利用することを想定し、その連携部分を制御・監視するためのガバナンスレイヤーやゲートウェイの必要性を検討する。
  • 利用するAIモデル(ベンダー)ごとに、コスト構造、性能特性、そして各国政府によるアクセス規制やソブリンリスクが存在しないか、公式情報を確認する。
  • 既存のシステムにおいて、特定の外部サービス障害やAPI変更時にも機能継続が担保される「冗長化」「切り替え戦略」が設計されているかを確認する。

推奨対応

  • AI導入に関わるプロジェクトにおいては、「何を単なるAI搭載か」ではなく、「AI利用によってどのようなビジネス上の成果を出すか(課題解決の全体像)」という視点から要件定義を行う。

  • システムアーキテクトやセキュリティチームと連携し、複数の外部サービス・モデルを利用するマルチベンダー環境に対応できる柔軟なAPIゲートウェイ構造を設計することを検討する。

  • AI利用に関するデータガバナンスポリシー(どのデータをどこまで学習に使用できるかなど)を策定し、具体的なシステム制御機構として実装を進める。