解説

生成AIツールであるCopilotが普及する中で、従来のウイルス対策では防ぎきれない新しい脅威が報告されています。それは、単なるプログラムの実行ではなく、「文書内の文章」に悪意のある命令を隠し込む「AIワーム」というものです。

この仕組みは、攻撃者がWordなどの外部資料を利用して、Copilotがその中の指示を誤って「実行すべき命令」として解釈させることに依拠しています。一度社内文書の共有フローに乗ると、最初の感染源を特定することが非常に難しくなります。

ポイント

  • Copilotなどの生成AIが使用される文書を介して、従来のウイルスとは異なる新しい種類の「AIワーム」の脅威が報告されています。
  • このワームは、悪意のある命令を単なる文章として文書に埋め込み、Copilotがそれを指令として解釈することで機能を実行させます。
  • 一度社内の文書共有プロセスに乗ると、感染源を特定しにくく、業務効率化を進める上でのセキュリティの新たな課題となっています。

情シスへの影響

生成AI(特にCopilot)を活用した文書作成・分析のフローにおいて、外部から入手したデータや生成された成果物に意図しない悪意ある指示が埋め込まれ、利用者の知らないうちに情報を改ざんしたり、不正な処理を行わせるリスクがあります。

従来のファイルベースのウイルス対策では対応が難しく、AIによる文書の内容(プロンプト)を信頼するかどうかという「データ入力の検証」レイヤーでの制御と監視が求められます。

影響範囲

主要な影響範囲は、Microsoft 365のエコシステム内、特にCopilot機能を利用して外部資料や社内文書(Wordなど)を読み込ませるプロセスです。具体的な対象バージョン・設定は記事に記載されていませんが、全ユーザーの利用環境およびデータ共有フロー全体に関わります。

管理上の対応としては、どの外部データソースからの入力をAIが許可されているか、また生成された出力データの検証プロセス(人間の介入ポイント)を明確化することが必要になります。

重要度

★★★★★

対象者

  • M365管理者
  • セキュリティ担当者

優先度

早めに対応

優先度の理由

悪用が報告され、すでに実証実験が行われている段階であり、潜在的なリスクが高い状態です。パッチや設定の提供はされていますが、「根本的な解決」には至っていないため、利用規程の見直しと、現場での利用フローに対する具体的な手順(データの検証ステップ)を早急に確立する必要があります。

確認手順

  • Copilotを利用する主要な業務プロセスを特定し、外部データ(Web/メールなど)からの入力経路のリストアップを行う。
  • 文書内に埋め込まれる可能性のある非表示テキストやメタデータをチェックできるツール(あるいは手順)を用意する。
  • 生成AIが処理した文書について、最終利用前に誰が、どのような権限で内容をレビューし承認するかという「人間の関与ポイント」の設定を見直す。
  • Microsoft 365のセキュリティ機能を利用して、プロンプト入力の内容に関するログや異常な指示パターンがないか監視するための準備を行う。
  • ベンダー(Microsoft)が出している最新の緩和策や推奨設定が、自社のCopilot利用環境に適用されているか確認する。

推奨対応

  • 当面の間、外部から取得した文書をそのままCopilotに入力せず、必ず人間による内容精査・検証を行うルールを徹底してください。

AIを利用したデータ処理においては、「情報」と「命令」の分離ができないリスクが存在するため、全ての生成物や改変プロセスにおいて、担当者が多層的にレビューし承認する手順(ガバナンス)を組み込むことが最も重要です。これは技術的なパッチ適用だけでなく、社内運用ルール(ポリシー)の更新が必要な対応となります。