解説
近年のサイバー脅威や地政学的なリスクの高まりを受け、重要インフラ分野におけるセキュリティ対策が求められています。この度、CISAを含む複数の国際機関から、「CI Fortify – Advice for isolating vital systems」というガイダンスが発表されました。これは、危機的状況において、社会機能の維持に不可欠なシステム(オペレーショナルテクノロジー:OTなど)を他のネットワークから物理的・論理的に分離し、継続運用するための手順を示す指針です。
単なるセキュリティ対策という側面を超え、「どのシステムが生命線か」「それらの接続関係はどうなっているか」といった根本的な設計の見直しが必要になることが特徴です。目指すのは、大規模な障害やサイバー攻撃が発生しても、必須のサービスを途絶させないレジリエンス(回復力)を高めることです。
このガイダンスの内容を踏まえると、自社環境においても、単に外部からの侵入を防ぐだけでなく、組織にとって最も重要な業務プロセス全体を俯瞰し、「本当に止めてはいけないコア機能」と「周辺のシステムとの依存関係」を整理しておきたいところです。
ポイント
- CISAと国際パートナーが共同で「CI Fortify」ガイダンスを発表しました。
- 本ガイダンスは、重要インフラ(CI)が危機的状況下で、生命線となるシステムを他のネットワークから隔離し運用するための手順を提供します。
- 組織にとって必須なシステムの特定・関連性マッピングを通じたレジリエンス強化を目指しています。
情シスへの影響
重要なオペレーショナルテクノロジー(OT)やミッションクリティカルな業務システム群において、セキュリティ境界の再設計と物理的/論理的な分離策の実装が求められます。
具体的な影響範囲としては、単なるITネットワークへの対策に留まらず、産業制御システム(ICS)やOT領域まで視野に入れた包括的なアプローチが必要となり、ネットワーク全体の大規模な変更計画を立てる必要があります。システムの関連性マッピングが前提となるため、社内の全ての重要なオペレーションの流れ(プロセスとシステム間の接続点)の洗い出しが必要です。
影響範囲
重要インフラに関わる全システム(IT/OT境界を含む)、物理的・論理的なネットワークアーキテクチャ全体、ID管理領域、および関連する運用手順。対象範囲は組織の重要度によって変動するため、「要確認」。
重要度
★★★★☆
対象者
- ネットワーク管理者
- セキュリティ担当者
- M365管理者
- AD管理者
- Windows管理者
優先度
計画的に対応
優先度の理由
本ガイダンスは、特定の脆弱性に対するパッチ適用を求めるものではなく、組織の根幹的なシステム設計(アーキテクチャ)の見直しとリスク分析に基づくレジリエンス構築に関する指針です。したがって、緊急な対策というよりは、経営層の承認を得て計画的に取り組むべき重要な課題です。しかし、重要インフラへの適用が求められるため、後回しにせず具体的なプロジェクトとして組み込む必要があります。
確認手順
- 組織内の「極めて重要なオペレーショナルテクノロジー(OT)」を定義する作業を開始する。
- 上記クリティカルなシステム群の依存関係(データフロー、通信プロトコル)を詳細にマッピングする。
- 現在のIT/OT境界における物理的・論理的な分離ポイント(セパレーションポイント)が適切か評価する。
- 既存のバックアップや運用体制において、外部からの遮断状態での継続性をシミュレーションする。
- CISAおよび各業界のベストプラクティスに基づき、レジリエンス設計のための具体的な要求事項を収集する。
推奨対応
- まず経営層と連携し、どのシステムが事業停止時に「不可欠(Mission Critical)」であるかの定義づけを行うこと。
- IT資産管理部門やOT運用担当者と協力し、重要システム間の接続性を包括的にマッピングし、ボトルネックを特定すること。
- セキュリティアーキテクトを中心に、現状の境界防御策を見直し、「ゾーン分離」の考え方に基づいた論理的または物理的な隔離設計(エアギャップなど)の実現可能性を検討すること。
- 外部コンサルタントや専門ベンダーからの支援を得て、レジリエンス戦略全体のロードマップを作成し、計画的に実行に移すこと。
出典・公式情報:
CI Fortify – Advice for isolating vital systems
本記事は、上記の公開情報をもとに、情報システム担当者向けに要点・影響・確認ポイントを整理したものです。脆弱性対応・製品仕様・更新情報は変更される可能性があります。実際の対応前に必ず元記事・公式情報をご確認ください。
