解説

社内データに接続して、自然言語での指示だけでダッシュボードや分析グラフが自動で生成できる機能が登場しました。これまでのデータ分析では専門的な知識が必要でしたが、この新機能により、非エンジニアでも手軽に高度なデータ可視化が可能になる可能性があります。

具体的には、Amazon RedshiftやGoogle BigQueryといった主要なデータベースだけでなく、SharePointやGoogle Driveのようなファイル形式の文書からもデータを読み込めるのが特徴です。単なる集計にとどまらず、企業のビジネス用語や独自の計算式まで参照しながら分析を進められます。

情シス部門として注目したいのは、社内機密性の高いデータに対するアクセス制御とガバナンス体制です。どのデータに対してAIがどのような処理を行い、外部に情報が流出しないかという視点から、利用の検討が必要になるでしょう。

ポイント

  • ChatGPT Work向けの新機能「Data agent」は、自然言語による指示だけで社内データを接続し、ダッシュボードやグラフの自動生成を可能にする。
  • Redshift, BigQueryなどの多様なデータベースに加え、SharePointやGoogle Driveなど非構造化データも分析対象にできる点が特徴である。
  • 専門知識やクエリ記述が不要なため、非エンジニアでもデータ分析・可視化が行えるようになり、データの民主化が進む可能性がある。

情シスへの影響

この機能は、企業内で利用される生成AIサービス(ChatGPT Work)の拡張性に関わるため、主に管理面で以下の検討が必要です。

  1. データ接続・権限管理: 複数の外部データベース(Redshift, BigQueryなど)やファイル共有プラットフォーム(SharePoint, Google Drive)への安全な接続設定が求められます。AIに対して「どのデータを」「どのような目的で」読み込ませるかという、厳格なデータガバナンスとアクセス制御の確立が必要です。

  2. 情報漏洩リスク: ユーザーからの自然言語指示を通じて機密性の高い社内データを分析させるため、入力されたプロンプトや処理されるデータがOpenAI側などでどのように扱われ、保護されているか(プライバシー・セキュリティ)を精査する必要があります。これは単なる利用上の注意点に留まらず、契約レベルでの保証を確認すべき項目です。

  3. 利用範囲の制御: プラグインとして提供されるため、管理者がデータの接続先や機能の使用可否をゲートウェイとして制御できる設計である必要があります。どの部門がどのデータセットを利用できるのか、といったアクセス権限(RBACなど)の具体的な実装・検証が必要になります。

影響範囲

ChatGPT Workプラットフォーム、および連携対象となる複数のクラウドデータベース(Amazon Redshift, Google BigQuery, Snowflakeなど)、ファイル共有ストレージ(Google Drive, SharePoint Online)。影響を受けるのは、本AI機能を利用するエンドユーザー全般であり、管理者はテナントレベルでの接続・利用制御と認証認可の設定を行う必要があります。

重要度

★★★★☆

対象者

  • セキュリティ担当者
  • M365管理者
  • Entra管理者

優先度

計画的に対応

優先度の理由

この機能は、社内データと連携し機密性の高い情報をAIに処理させるため、利用可否の判断が重要です。しかし、機能自体はプラットフォーム側のアップデートであり、直ちに環境を停止・変更する必要はありません。セキュリティ担当者や情シス部門として、まずは公式ドキュメントを確認し、PoC(概念実証)フェーズでのデータガバナンス設計とアクセス制御の見直しを行うことが適切です。

確認手順

  • OpenAIまたは利用検討するパートナーベンダーの公式情報を確認し、「Data agent」機能におけるデータ処理フロー、匿名化/マスキング機能、およびログ記録ポリシーの詳細を把握する。
  • 接続対象とする各データベース(Redshift, BigQueryなど)について、API経由での外部連携に必要な認証情報やアクセス権限を洗い出し、最小権限の原則に基づいた設計を行う。
  • SharePointやGoogle Driveなどファイルストレージからデータを読み込ませる際の機密情報(PIIなど)がどのように保護され、どの段階でマスキングされるのか、データライフサイクル全体を確認する。
  • 生成AIのプロンプト入力と出力されたダッシュボードの両方について、監査ログとして取得・保管できるか、およびそのログを誰が閲覧できるかのポリシー設定を行う。

推奨対応

  • まずはPoC環境で特定のデータセット(機密度の低いもの)のみを用いて利用可能性とセキュリティリスクの検証を実施してください。
  • データの接続元について、「必要最小限のデータ」にスコープを絞り込み、ゲートウェイ層でのフィルタリングやアクセス制御を前提として設計を進めてください。
  • 社内情報ガバナンスポリシーに基づき、AIによる自動分析結果(提案された指標やワークフロー)に対する最終承認プロセス(人手を介したレビュー)の義務付けを検討し、部門横断的な合意形成を図ってください。