解説
給与計算業務の自動化が進む一方で、現場ではシステムを通り越してExcelなどを使った手作業によるデータ検証が常態化しているという実態調査の結果が発表されました。
この結果から、単に新しいシステムの導入を進めるだけでは課題解決に至らないことが分かります。根本的なデータフローや情報管理の構造自体を見直すきっかけとなります。
ポイント
- 給与計算システムの普及が進む一方で、現場ではExcelを使用した手作業でのデータ検証や加工が9割近くで行われている実態が明らかになった。
- 主な手作業の原因として、「検算」「将来変動情報の管理」「過去履歴の保持」のための表計算ソフトウェアの併用が挙げられた。
- システム任せにせず、人手による確認(人力チェック)が主流であり、人事・給与データの一元管理や構造的な改善が必要であると指摘された。
情シスへの影響
データガバナンスと情報フロー
給与計算業務の実態調査は、単なるアプリケーションの利用状況の問題ではなく、組織全体の「データの流れ」と「真実の情報源(Single Source of Truth)」が適切に定義されていないことに起因する課題を示しています。
システムの導入が進んでいても、異なるシステムやツール間でデータが分離し、その手作業による連携・検証フローが業務プロセスとして定着している場合、情報ガバナンスの観点から大きなリスクを抱えます。特に「どのExcelシートの情報が最終的に正しいのか」という定義付けと管理が必要になります。
データ取り込み(インポート/エクスポート)運用
手作業でのデータ加工や蓄積が必要な場合、必然的にCSVファイル等によるデータの出力と再入力が多発します。これはAPI連携の設計不良や、システム間のマスターデータ同期プロセスの不備を示唆しており、定型的なデータ取り込み(ETL/ELT)プロセスやデータフローの監査体制の構築が求められます。
ワークフローと承認プロセス管理
「メモやチャット、メールなどに記録をためておき、月末にまとめて入力する」という実態は、重要な人事情報変更(昇給、住所変更など)に関する情報ガバナンスおよび承認プロセスの欠落を示します。これらのデータが本来システム内のワークフローに乗って管理されるべき箇所で抜け落ちている可能性があり、管理者側でのプロセス設計の見直しが急務です。
影響範囲
人事・給与計算の業務に関わる全てのシステム(SaaS含む)、および関連するマスターデータ管理領域。影響範囲は、個別の部門やワークフローに紐づく全ユーザー及びデータセット(役職変更、住所変更など)。特にデータを手動でExcelに入力したり、外部CSVファイルで調整したりしているすべての工程が該当します。
重要度
★★★★☆
対象者
- M365管理者
- Entra管理者
- AD管理者
- Windows管理者
- セキュリティ担当者
優先度
計画的に対応
優先度の理由
この記事は特定の脆弱性や即時的なシステム停止を促すものではなく、組織の業務プロセスとデータガバナンスに関する課題提起です。しかし、「手作業での情報処理」が恒常化していることは、システムの根本設計(マスターデータの管理、ワークフロー)に起因する問題であり、抜本的な改善計画(DX推進、システム改修など)を立てるタイミング(=計画的対応)と捉えるべきです。
確認手順
- 主要な業務データ(例: 給与、所属、役職)のマスターデータをどのシステム/ツール(Excel含む)で定義し、管理しているかを確認する。
- 部門や制度変更に伴うデータの追加・修正フローについて、承認プロセスが電子化され、システム内部で完結しているかを監査ログを用いて確認する。
- 部署間で異なるデータソースを利用する場合に、どのデータを「真実の情報源」として統一し、参照させるかというガバナンス定義を策定する。
- CSVファイルでの一括取り込みが行われる場合、その入力元のデータが正規のプロセスを経たものか(手動作成・外部取得でないか)を確認するためのチェックリストを作成・適用する。
推奨対応
- 単にシステムを導入するだけでなく、人事マスター情報や給与計算ロジックに関する「真実の情報源」を明確に特定し、そのデータフローを一元化すること。
- データ変更履歴の管理(誰が、いつ、何を、なぜ変えたか)を自動的に記録・追跡できるワークフローシステムへの移行を検討する。
- データ入力や検証プロセスにおいて、手動でExcel利用が必要な工程について、API連携による自動化または専用画面での入力ガイドライン策定を行うこと。
出典・公式情報:
“脱Excel”なんて言えない 「システムが出したデータをExcelで検算」がなくならない理由
本記事は、上記の公開情報をもとに、情報システム担当者向けに要点・影響・確認ポイントを整理したものです。脆弱性対応・製品仕様・更新情報は変更される可能性があります。実際の対応前に必ず元記事・公式情報をご確認ください。
